たいせつなこと(1)

弘正寺には、三面大黒天様が祀られています。大黒天という神様は、七福神の神様として有名です。台所に祀られたことから、お坊さんの奥さん(梵妻、ぼんさい)は、「大黒さん」と呼ばれていました。

 

普段からお坊さんの身の回りの世話をしてくれる奥さんは、損な役回りばかりです。本堂での読経や檀家参りのあるお坊さんは良くも悪くも外面、体裁に気をかけなくてはなりません。ですから、檀信徒の方々、お参りの方々へ、はっきりと大事なことをお伝えすることに、ためらいがあります。

 

そのような時、お坊さんにかわって、言いにくいことを伝えてくれるのが、奥さんなんですね。

 

先日、お寺としては理不尽で残念な出来事がありました。「ペット禁止」を境内に掲げているにもかかわらず、早朝、飼い犬を連れて、年配のご夫婦がお参りに来られました。

 

私がご注意申し上げようとしたところ、梵妻が「私がかわりにお伝えします」と言い、本堂で飼い犬を抱きかかえながらのお参りを待って、お二人に「おはようございます」、丁重に「すみませんが…」と前置きし、「ペットを連れてのお参りはお控えください」とお伝えしました。私はその一部始終を見ておりましたが、彼女の言動に過不足はありませんでした。

 

ご主人はご理解いただけたようで、飼い犬を抱え足早に車に戻られました。奥様は終始無言でありました。その後、車に飼い犬を置いて、改めてお参りされるのかと思いましたが、そのままお二人は車で帰られました。

 

その後、その年配の女性から、私どもに対する、一方的な「クチコミ」が投稿されました。

 

今申し上げた状況を一切触れない内容であります。

 

ペットは家族同然なのかもしれません。ですから、飼い犬の存在を否定されたと、勘違いされたのでしょうか。また「ペット禁止」をちゃんと理解しておられ、その上、年下の彼女に、当然のことをお願いされるのは、ご納得できなかったのかも知れません。

 

しかし私は、今回の一件に対して、「個人的非難」は一切いたしません。

 

なにより梵妻がそれをのぞんではおりません。私にとって彼女は「大黒天」そのものであります。寺族の一員として、毎日身を粉にしています。いわば私にとって、大げさでなく、生き身の本尊と言って良いでしょう。

 

お坊さんとして、自分の至らなさに感じ入るとともに、愛宕山弘正寺、そして梵妻のため、皆様にお伝えせねばならないことがある。

 

そこで、今回の一件を、なにがしか(その年配の女性の名前は判りますが)のご縁とし、

 

この一方的な「クチコミ」を生かし、今後つぶさに挙げながら、

 

お大師様の御教え、仏様の御教えを、

 

また、さいの河原万体地蔵尊、弘正寺について、お伝えすることとしました。合掌

 

※追伸 この二体の人形は、知立市の山本さんから奉納いただきました。

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